アーカイブ :2017年11月 こんな日は月でも観に行こう

こんな日は月でも観に行こう

小さな変化に心を傾けてつづる空観流ひとりごと

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「ゴールデン根付アワード」レポート

 根付界のアカデミー賞とも例えられる、「ゴールデン根付アワード」授与式が先日11月10日(金)に京都清宗根付館で盛大に行われ、私も参会してきました。この賞は根付作家のみならず今後の牙角彫刻全体にとってもますます重要な指針を与えることになると思うので、そのレポートを載せたいと思います。
 久々の長文ブログになりますがお付き合いください。(写真は肖像権のこともありますので控えますが、一番下に載せています門川京都市長のブログでご覧いただけます。)

 まずは第4回目を迎え受賞された、黒岩明氏(国際根付彫刻会会長)、上原万征(まんせい)氏(国際根付彫刻会会員)、特別賞の栗田元正氏(国際根付彫刻会役員)の3名の方々、おめでとうございます。時代の趨勢を感じさせる作品が選出されたことは、大変嬉しいことですし、他の根付作家にとっても大きな示唆をもたらすものと思われます。
 
 出席して今回感じましたのは、国内外の来賓を招いた授与式が数少なく貴重であること、審査を根付業界以外の芸術家、専門家が行っていること、コンテストにより作品の質が上がってきたことの3つです。
 
 「ゴールデン根付アワード」は毎年開催を継続し、国内外のメディアに根付文化の発信をしています。現在根付が含まれるコンテストの数は減少傾向にありますので、今後より一層権威ある賞になっていくものと思います。
 授与式は高円宮妃久子殿下をはじめ、毎年各国大使(今年はオーストラリア大使ご夫妻)、京都府知事 山田 啓二氏、京都市長 門川大作氏らが過密スケジュールを調整して一堂にご臨席され、司会担当の岡部まりさんが華やかな雰囲気を添えられます。このような授与式はなかなか他ではありません。毎回授与式を開催されている木下館長の比類のない情熱と、それをご準備をされてきたご担当者の方々には頭が下がる思いです。

 この賞は2014年から始まりました。その前身は2009から2011年までキンゼイ国際芸術財団が主催した「ゴールデン・ドラゴン賞」を清宗根付館にて授与してきた経緯がありますが、そのときは長年の功績を称えて表彰するものでした。現代根付の偉大なコレクターであったキンゼイ氏の作家を育成するという意思を引き継ぎながらも、清宗根付館では公益財団として選考基準を刷新して、コンテスト形式で前年に制作された作品からその優秀性や作家の能力を積極的に評価するようになりました。
 清宗根付館では最近外国からの来館者が増えたこともあり、より分かりやすく日本的な情緒を表現した作品に人気が集まっていると聞いているので、その傾向がより深く感じられるものとなりました。今回の受賞作品も歌舞伎や浮世絵から範を取った題材や日本文化の風習に因んだ作品となりました。

 選考委員も陶芸家、人形作家、革工芸家、日本画家など各界を代表する見識者によって総合的な芸術性が評価されています。このことは業界の垣根を越えて交流や感化が生まれ、根付の向上にも寄与しています。根付作家からはうかがい知れない多くの学びをもたらしてくれます。

 そのことは当然根付作家の意識にも影響を与えています。清宗根付館を何度か訪れている方は、作家の成長ぶりに驚かれていらっしゃる方も多いと思います。私自身も今回のノミネート作品の素晴らしさに驚いたうちの一人です。時代の変遷をたどると90年代から2000年代にかけては作家の独創性が重視された作品が多く登場し、裾野を広げながら多彩な作品が生まれましたが、2010年代以降は古典を見直す風潮が生まれ、根付の基本を踏まえた造形で魅せる作品が多くなってきました。技術的には古典根付を凌駕する作品も生まれてきました。

 清宗根付館は2007年に開館し今年で10年を迎えましたが、美術館で作品を飾るという新たな目的に沿ってより視覚的に鑑賞する作品が生まれ、根付の世界に大きな改革をもたらしました。現在でも根付は新しい変化を受容しながら、進化を続けています。

 今回の受賞作品について少し述べますと、

黒岩氏の「鳴神」は歌舞伎を題材にしながらも、同氏の大らかな人体表現と大胆な構図が躍動感のある作品になりました。また象牙彫刻と漆着彩という進取の取り組みが評価につながったと思います。

上原氏の「猿団子」は金工技術と異素材の象嵌を融合させながら、華美になりすぎないように素材の質感をうまく引き出しています。古くからある風習に独自の視点を加えて成功しています。工芸的精確さが目を惹く作品となりました。

栗田氏の「おかんをきく」は国芳の浮世絵から想を得て、浮世絵ならではの平面性を根付の造形に巧みに転化させています。平彫りで定評のある同氏だけに、着物や帯の彫りの見事さには唸らせられます。控えめに入れた染色も効いています。

●受賞作並びにノミネート作品は11月末まで清宗根付館で展示されますので、ぜひご覧ください。
京都清宗根付館 公式サイト https://www.netsukekan.jp/

●当日の模様を伝えるサイトはこちらから。
京都市長 門川大作氏オフィシャルブログ
http://www.kyoto-daisakusen.jp/activity/index.cgi?3697
岡部まりさん オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/mari-okabe/entry-12327626734.html

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