時の妖精 こんな日は月でも観に行こう
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こんな日は月でも観に行こう

小さな変化に心を傾けてつづる空観流ひとりごと

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時の妖精

今日は根付にしたいテーマを考えていたら、こんな物語を考えてました。

まだ神々が天にいたころ、時の妖精である彼女はある日、妖精の世界から抜け出し、憧れだった人間界に降りてきました。

妖精の世界では毎日決まったことの繰り返しで、年をとることもありません。ましてや恋することも知りませんでした。彼女の役目は一日一回夕暮れ時に自分の持っている鎌を振ることでした。彼女は知りませんでしたが、それは人間たちに順番に時を知らせる時の鎌だったのです。彼女はそんな規則ばかりの妖精界に飽き飽きしてしていたのでした。

彼女には人間界が笑いや喜びに満ちあふれて見えていたのです。そこならどんなに楽しいかと胸をわくわくさせてこっそり抜け出したのでした。しかし憧れと程遠く、苦しみやねたみ、暴力など悲しみばかりの世界でした。そんな人間たちには、彼女の姿は見えず、ぶつかられたり大声を出されたりと散々な目に会います。行くあてもないまま街をさまよい、疲れて倒れてしまいました。

気づいたら優しい心を持った人間の少年に助けられました。彼の優しい心には妖精は見えたのです。彼は病と闘い、その命はあと僅かだったのです。自分がもうすぐ死ぬことを分かっていたので、彼は人を思いやることができたのです。

妖精は人間界で初めて優しくされた少年に、初めての感情をもちました。ずっと彼と一緒にいたいと思ったのです。彼女が彼を助けたいと願うほど、彼は弱っていきます。そこで彼女は知ったのです。いつも彼女が振り下ろしていた鎌で時を知らせるのは人間の命の終わりだったということを。そして次の順番が彼だったことを知ると、彼女は神に自分の命を引き換えにして彼を助けて欲しいと、願いました。

しかし神は反対し許しませんでした。でも彼女は神の声も聞かず、鎌で自分の胸を刺したのでした。妖精と時の鎌はそのまま消えてしまいました。

少年の病が良くなったのはそのあとでした。
彼はその妖精に二度と会うことはなかったそうです。



僕の根付のイメージは、
彼に助けられたときに彼と一緒にいたいと夢見る妖精の嬉しそうな表情としぐさを考えていました。

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