いと小さく見ゆるはいとをかし こんな日は月でも観に行こう
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こんな日は月でも観に行こう

小さな変化に心を傾けてつづる空観流ひとりごと

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いと小さく見ゆるはいとをかし

一黙雷如平安時代の才女、清少納言が「枕草紙」に「いと小さく見ゆるはいとをかし」と記しているように、日本人は古くから小さいものに対して特別の風情を感じていたようです。
私が彫刻している根付も、日本独自の極小彫刻として国内のみならず海外でも高く評価されています。それは約一寸(3.3cm)四方の大きさで、掌にすっぽり収まります。このような彫刻は世界の中でも類をみません。

もともとは室町時代末期から江戸時代にかけて印籠などを帯から提げるときに紐で帯から通してその先端につけて留め具として使用されてきました。時代が下るにつれて粋と洒落の象徴として作り手が創意を凝らして隆盛を極めました。

根付の制約としてよく言われるのが、
1.着物や帯を傷めないように丸みがあること。
2.紐通しの孔があること。
3.程よい大きさであること。
4.360度どこから見ても彫刻が施されていること。
となります。

そんな根付ですが、私がなぜこだわっているかというと…
やはりその小ささ故なんです(笑)。

小さいんですが、そこに森羅万象を凝縮することができると感じるからです。
大きな彫刻では味わえない親近感や愛着があるんです。
掌で作品の感触を確かめながら、小宇宙の広がりを感じる、自分だけの至福のひととき。

現代美術では大きなスケールの作品もありますが、小さいというマイナス要素をプラスにする逆転の発想がとても好きなんです。

存在感というのは不思議で、目の近くまで作品を持っていくことで拡大鏡のように見ることができ、比較するものもないと自然と印象は大きくなります。
小さくてもポーズやプロポーションをデフォルメすることで、ダイナミックな迫力を持たせることができます。

また触覚の芸術、愛玩できる芸術などとも呼ばれ、他のジャンルとは別の楽しみ方があります。これはもともと装飾品として発展してきたからです。そのため、持ち手の好みが重要で好きなものしか身につけたくないという心理が働きます。「思い入れ」によって長く愛された作品は風合いを増していきます。時間が作品に「味」を加えていくわけです。

そのような根付ならではの特徴に、私は多くの可能性を感じています。


写真は創作途中の小さな雷神。


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