彫刻が語りだす こんな日は月でも観に行こう
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小さな変化に心を傾けてつづる空観流ひとりごと

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彫刻が語りだす

空観物言わぬ彫刻が語りだす。

決してオカルト小説の見過ぎではありませんので(笑)。
これは私の考える彫刻の真髄です。
今日は私がなぜ絵画やインスタレーションではなくて彫刻に惹かれているかを紹介します。

立体彫刻はご存じのように3次元となっています。ですが、そこに時間軸が加わることで、見え方や感情移入の仕方が変わってくるから不思議です。彫刻を鑑賞する際一方向から見る人はまれで、たいていぐるっと一回りするか、近付いたり遠ざかったりします。
そうすることで視点を固定化せず複数の視点から異なる景色や表情を楽しむことができます。光と影のコントラストや質感の変化、凹凸の緊張感などを通して感情の揺れを感じるのです。
これは絵画などのジャンルと決定的に異なる楽しみ方です。

絵画の場合外界との境界を額で仕切りますが、彫刻の場合は額はないので彫刻のシルエットが境界となります。彫刻作品と外界の接点が同じなので、彫刻を実とすると外界が虚の関係になり、空間までが作品の一部になります。長く見ていると彫刻が虚に見えてくることさえあります。

物体としてみれば彫刻には重力が働くため、垂直性が大切になります。重力を無視した造形はありえません。その垂直性に左右非対称、旋回(らせん構造)を加えることで動きが出てきます。この動きが時間軸を生みます。
また複雑な形がバランスを保って立っている状態は彫刻ならではの楽しさです。決してしゃべることはない彫刻ですが、迫ってくる印象を与えたり、一方向に動こうとしたり自発的な意思を持っているように感じられることがあるのです。
まさに「彫刻が語りだす」。

しかし、この重力を無視することができる唯一の彫刻が根付です。当然立たせることはできますが、無重力感覚を楽しむことができる特徴は見逃せない要素です。もともと帯の上からぶらさげるので無重力での浮遊感覚が備わっているのです。重力が支配する世界の浮遊感、それが根付の魅力でもあります。根付を下から眺めた時の存在感、背筋に電流が流れるような感覚が走ります。

また実用としての根付は、現在では一種の護符のような役割を持っています。装飾品として持ち手の身体に近ければ近いほど、好んだものしか身につけないためです。根付はプライバシーの守護にもなるのです。

根付について言うならもうひとつ。根付は触ることのできる彫刻です。触ることで愛着がでてくる不思議な彫刻なのです。ミロのヴィーナスに触れたいと思っても触れることはできません。この親しみやすさ(?)が根付の醍醐味です。

彫刻に魅せられた私の行きついた究極の彫刻が根付であったのは当然だったかもしれません。



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