空観解体新書 その2 重心と感情表現 こんな日は月でも観に行こう
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小さな変化に心を傾けてつづる空観流ひとりごと

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空観解体新書 その2 重心と感情表現

前回の正中線をひねることで生まれる効果について説明しましたが、今回は実際の作品を通して見ていきます。

まず最初に作品の正中線を決めます。それが決まらないと崩すことはできません。

次に崩し方ですが、そのときに問題になるのが重心です。どれだけ小さくてもその重心がずれると不安定な感覚を与えます。そのため常に重心を意識して体にひねりを与えていきます。

根付の場合、体躯の解剖学的な均整を保つというよりは、各部位を長くしたり、曲げたりするマニエリスム(後期ルネッサンスとバロックの間にみられる人体を細長く誇張する様式)に近いデフォルメをします。このひねりを加えることで、重量感、迫力、動勢、緊張感が生まれ、生き生きとした生命を宿しているように見えます。
よく「しなをつくる」といいますが、同じことで、こうすることでそこに感情まで表現できます。

最初に作品を見たときにどんな印象を与えられるかを大切にしています。では「ヴィーナス~新世界~」をもとに進めます。

sample3.jpgヴィーナスでは右腰を前に出すことで右足に遊びが生まれ、優雅さを一層強調できます。肩は腰に比べ右肩を後方に引き上昇する動きを与え、頭部を右斜め上に向かせることで、ヴィーナスの凛とした意思の強さを表現しました。

当初は顔を下に向ける構図を考えましたが、華やかさや高揚感が感じられませんでした。さらに背筋の流れに顔の向きをあわせると意思の強さが感じられなかったため顔を上にのけぞらせました。

貝の中心線に対して、ヴィーナスの向きをわずかにずらしているため、体の流れを強調させ、起き上がろうとする動きを与えました。作品の中心線とヴィーナスの中心線を合わせると逆に動きが止まりヴィーナスが下に伏せる感じに見えてくるから不思議です。

正面は安定した三角形の構図を採用したことで、垂直方向に伸び上がろうとする動きが生まれ、肢体のプロポーションを長くすることで逆遠近法的な効果で顔をより小さく見せています。最初から顔の一点に視線が行くような構図にしているのです。
体躯全体のS字のラインは回転の動きを与えることで、貝の形と相まって、今にも動き出しそうな雰囲気をかもし出します。

常に重心を考えながら構図を考えることで、ヴィーナスが今にも起き上がろうとする胎動を静謐さの中に込めました。
  

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