空観解体新書 その8 Face to face こんな日は月でも観に行こう
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小さな変化に心を傾けてつづる空観流ひとりごと

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空観解体新書 その8 Face to face

V_BLK2.jpg空観根付最大の関心事は「顔」です。

顔を彫りたいために根付を彫っているといっても過言ではありません。造形論や作品のテーマをいろいろ練っても、最終的には顔の相貌で決まります。そのくらい顔は重要な部位なのです。

一般的に顔は膨大な情報量を持っているといわれます。慣用句を見ても多様に使われています。顔には感情がにじむので「顔色をうかがう」わけですが、人格まで代弁するので「顔が立っ」たり「顔がつぶれ」たり、その上地位や身分まで現れるらしく「顔がきく」といった様々な使われ方にになります。
乳幼児が他の人の顔に関心が高いことはよく知られていますが、元来人間の性質としてどんなものにも顔の輪郭をみるそうです。それは人間にとどまらず、顔がないはずの満月まで微笑みはじめ、北風まで頬を膨らませて見えるわけです。そのように擬人化して自らと共通する部分を想定することで理解を深め、親近感を持つようになるです。
心理学では相手の感情は視線や表情に表れるといいます。これは「符号化」と呼ばれ、いくつかの符合を解読することでコミュニケーションをとります。しかし顔の表情は自己演出できるため心で泣いて顔で笑うことだってできるわけですから、動物行動学者によれば表情や言葉は信頼できないとしています。それだけ複雑であるといえます。

顔の重要性は改めて繰り返さなくても、日常的に誰もが感じることです。起きた時に最初に鏡でみるのは何でしょうか?やはり顔なのです。自分の顔を見ることで健康状態、精神状態など確認しているのです。

私が顔を彫る際に気をつけているのは、初々しさです。朝起きて初めて顔を合わせた今日の自分と同じような発見です。いつ見ても初めて会ったような新鮮さを大切にしています。古典彫刻の傑作ベルヴェデーレのアポローンなどをみると永遠性を秘めた端正な顔立ちにはその初々しさを感じます。芸術の虚構世界のなかにこそ宿る永遠性とはそうしたことではないかと考えます。

顔が表す感情や人格を、芸術にまで追求したのが能面といえます。鬼神などの面は表情も大きくユーモラスですが、女の面として私も好きな「孫次郎」の面には感情を帯びた表情を極力落としたなかに人間を超える幽玄な世界を感じます。芸術とは虚構に真実を見つけること。無表情といわれる能面にも豊かな表情を見つけることはできます。正気と狂気、清濁併せ持った魅力が能面には潜みます。

顔に関しては書きたいことがたくさんあるのですが、今日はこのあたりで。
改めて私の表現について触れたいと思います。

| 空観解体新書 | 07:46 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

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