空観解体新書 その9 紅顔の根付たち こんな日は月でも観に行こう
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空観解体新書 その9 紅顔の根付たち

空観 ヴィーナス前回、顔について人間は潜在的欲求から顔に執着をもっていることと芸術における永遠性の定義をしましたが、今回はその続編です。

私が作品のなかで一番時間を費やすのが顔です。顔の重要性は前編で述べたので多言を要しないと思いますが、表情には感情や意志、思想までにじみでるものです。また顔は作品の主題を作家に代わって主張します。

それでは顔を彫る際のポイントですが
1.プロポーションを考える
2.正中線を意識する
3.瞳の焦点を合わせる
以上、基本的なことかもしれませんが。

まずプロポーションですが、西洋彫刻では8頭身が理想とされますが、そのまま小さくするとより顔が小さく感じられるので、ヴィーナスなどの女性像の場合は7頭身にしています。だいたい日本の仏像は6頭身前後が多く、少しどっしりとした印象を与えます。見る人に親しみと慈悲を与えるプロポーションといえます。しかしヴィーナスは神々しさを与えたかったので7頭身にしています。
また雷神や風神などは5頭身にしています。この5頭身の設定は、興福寺にある国宝「天灯鬼」「龍灯鬼」をはじめ、俵屋宗達の「雷神風神図」などに見られるプロポーションです。人間に当てはめるとだいたい3歳児から4歳児になり、誰もが愛らしく感じるプロポーションといえます。ユーモラスなキャラクターを活かすにはぴったりのプロポーションです。
そうしたことなど考え、根付としての大きさのなかで効果的なプロポーションを割り出していきます。

次に正中線です。
もともと人間の顔は左右に僅かな違いがあります。顔の真ん中を通る正中線で左右対称にした例が能面です。能面は生身の人間と同じ目鼻口がありますが、左右対称にするなど様々な仕掛けを施し、人間離れした(神格化した)容貌にしています。また仏像も左右対称を基本として非日常性、神秘性を与えています。
それから西洋絵画で顔を正面から描くということは、イエス・キリストの存在や神格を意味します。
それを踏まえ私も正中線を大切にしながら表情を作っていきます。

ちなみに顔つきが私に似ているという話もちらほら聞きますがが、自分の顔を鏡に映してモデルにしているからかと思います(汗)。

最後に瞳の焦点やまた視線の向け方は今までの根付ではあまり追及されることが少なかったですが、「目は口ほどに物を言う」との諺を持ち出すまでもなく、目の与える印象を私は大切にしています。

以上の3点は誰しもが創作の際に考えることで、あえてここで主張する話でもないですが、基本に忠実でなければ進歩もありません。基本の積み重ねこそが上達への近道です。また基本原則が分かっていないと最終的な判断ができず、仕上がりにブレがでます。

作家が何に注力しているかを知っていただく意味でまとめました。

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