根付鑑賞キーワードその2 極小のリアリズム こんな日は月でも観に行こう
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小さな変化に心を傾けてつづる空観流ひとりごと

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根付鑑賞キーワードその2 極小のリアリズム

空観 金魚根付鑑賞のポイント第2弾はリアリズム。

自然の風物を掌の上で再現するスーパーリアリズム。それは素材やサイズの制約を越えて、細密さの中に写実性を盛り込み、あたかも本物であるかのような現実感と生命感を呼び起こします。自然に存在するあらゆるものが題材となり、あるがままの世界を再構築する姿勢が見受けられます。

匠の鋭い観察眼と精緻な刀技が見どころです。そこには創り手が持てる力の限り、刀技、象嵌、螺鈿、透かし彫りなどあらゆる技法を駆使して表現します。

ギリシアの賢者アリストテレスによれば、人間は自然のなかにある真実を模倣(ミメーシス)することに喜びを得るといいます。それは根付も同じで、自然物を、作り手の視点によって再構築された虚構世界に人々は心惹かれるのです。

たとえば冬支度の今は落ち葉をよく見かけますが、落ち葉と、写実的に彫られた落ち葉を並べたとしましょう。見る人はそのとき何か違いを感じると思います。精巧に作られた落ち葉に驚いたり、感心したりすることでしょう。見る人は今まで経験してきた落ち葉のイメージを集積して比較しているわけです。自己認識の一種で、自分のイメージしている落ち葉であると精神的な安心が得られるのです。それに伴ってさまざまな情感が引き出されることになるのです。

またリアリズムは自然に忠実な表現のため、内から立ち上る個性の表現とは趣が異なります。近代彫刻が自己を見つめることから出発したことから、個性を生かすために、他者と違う表現、内面性を重視するようになります。表現方法においてもフォルムが単純化され抽象化されました。リアリズム特有の表面上の緻密さがなくなり、作家の創作過程の痕跡が残されるようになりました。現代彫刻は他者と違う新しさが評価される傾向にあります。

天衣無縫という言葉があるように、リアリズムによって表現された個人の差異を超えた自然の摂理の追求こそがリアリズムの楽しみなのです。

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